2007年06月25日

●『NINAGAWA 十二夜』in博多座初日。

 博多座の初日に行って来ました。
 いろいろと思うところがあったのに、書きそびれてそのままに。
 きづけばもう、楽が近いのですね。
 忘れると書けなさそうなので、思い出せる範囲で(ということは、よほど心に残ったということです)書いてみます。

 まず、蜷川幸雄さんという演出家について、なぜだかとっても相性が悪い。
 どうしてだか、彼の演出って「理解できない」ことが多いのです。
 これまで3作品を見たことがあって(王女メディア、リチャード3世、オイディプス王)、そのどれもが、「?」というものでした。これは質が悪いとかそんなんじゃなくて単に相性だと思う。

 だからどきどきしつつの「十二夜」。敢えてシェイクスピアを歌舞伎化した挙句、相性の悪い蜷川さん演出だったもので。

 さて、本編ですが、全体の印象は「アクがうすいな~」でした。
 私の中の「蜷川カラー」といえば、群舞(?)、合唱(?)、派手な(大きな動きのある)演出。
 とにかく「数で押す」というイメージがあったのですが、歌舞伎だけにそれはなく。また、大人数で声を合わせて言うことによる「強調」という手法も使えない。動きのある演出も、無理。(歌舞伎という舞台を大きく逸脱するべく取り組めばできたんでしょうが、それならこの「十二夜」をやる意味がないですよね)
 なので、私が持っている「蜷川カラー」という点については、ほとんど気にならない程度でした。
(台詞回しも、感情の発露を求めるあまり…シェイクスピア系だとしょうがない部分もあるけれど、叫ぶようになりがちなところがちょっと…だったのですが、歌舞伎なだけに(笑)そんな部分があろうはずもなく)

 大道具に鏡を使ったのについては、舞台に奥行きが出ていたり、ふとその人の内面性を感じさせるような、普通なら見ることのできない後姿を映し出すことによって情感を出したりといったことができていて、そこは非常に良かったと思います。
 日本の舞台というのは「平面的」かつ「横に長い」のだそうです。テレビで言えばワイド画面。
 外国の舞台というのは「奥行きがあり」「縦にも長い」のだそうです。テレビで言えば、まだまだ現役の4:3画面?
 その違いというのを、鏡でカバーしていたよう。
 歌舞伎の大道具というのはきっちり作りこむわりに、奥行きを見せることを主眼としていないので、均一でのっぺりした素材になって、作り物感、下手すると2次元の「着せ替え人形の世界」みたいなふうに感じさせることが多いので。
 
 ただですね、やっぱりこれはどうよ!と思ったのは。
 冒頭、なぜかチェンバロの美しい音色+少年合唱団のボーイソプラノの清い歌声。
 なんだろう、違和感。
 そしてその少年たちが話の筋に絡むのかといえばそんなこともなく、そのまま退場。
 ねえ、あえて西洋の楽器を使う理由ってなんだろう? 話の筋も何も関係なく、少年の歌声から始まるのってなんだろう?
 キレイだからいいじゃん、心地よかったからいいじゃん、って反応もあると思う。
 だけど、歌舞伎を期待していった私としては(いえこれは歌舞伎じゃあありませんとか、そう言われたらおしまいなくらい、アレンジされている新作だけれども)、とても違和感。
 これは、全体的に使われるもので、その後も要所で流れてくる。
 長唄を、三味線をつれてきているのに使わないでどうしてそんな音なんだろう、ととても不自然に感じました。
 なんだろなあ…。

 全体的な筋立てとしては、少し中だるみがあったり、はしょりすぎ感があったりといろいろと謎でした。イヤホン解説がなかったらわからなかったなあ…多分。
 博多座のイヤホン解説は、時々ハズレもあるのですが、基本的にはわかりやすくて耳触りのいい「アタリ」な解説者さんが多いです。今回はとてもよかった。
 ちょっとついていけないくらい過剰な部分(あらすじにもあるのですが、普段から気に食わない人を、ちょっとからかってやろう、というシーンがあります。これについて、過剰なまでに繰り返しいじめたり、棒で殴ったりとそこまでしなくても、と思うシーンがある)があったりして、なかなか微妙でした。

「二役」という設定もあまり生きてはいないように感じたし…早代わりで客を沸かせる程度の役にしか…。く、苦しいなあ。 

ちなみに初日の初公演でしたが、平日の4時半という無茶な設定のせいか、非常に客足は悪かった様子。空席の目立った感じがありました。

台詞のつたなさや「噛み」は今後に期待するとして(っていうか、初日はしょうがない、と思ってしまうのは歌舞伎くらいだなあ)、今は客足は大丈夫なのでしょうか。
ちょっと心配です。

トラックバックURL

このエントリーのトラックバックURL:
http://tra.cside.com/cgi/mt/mt-tb.cgi/328

コメントする

(初めてのコメントの時は、コメントが表示されるためにこのブログのオーナーの承認が必要になることがあります。承認されるまでコメントは表示されませんのでしばらくお待ちください)