2006年9月12日

●戦う動物園

 勧められて読みました。
 いや、面白かったです。
 久しぶりにこの類の本で一気読みしました。

 旭山動物園、今でこそたくさんの人が知っていて、「どこにあるかは知らないけれど、名前は知っている」という人も多いと思います。
 よくよく調べてみると北海道にあり、しかも、札幌から1時間近くかかる。(北海道は都市間が1時間って珍しくないですが)
 なんでそんなところが有名なんだろう。
 わくわくするんだろう。

 ちょうど、職場の人が旭山動物園に行ったということで、マイブームが来ていたのもあるのですが、ちょっと調べてみただけでなんとなくうきうきする作りです。
 人を惹きつける施設というのは、働いている人が幸せじゃないと駄目だと思います。その施設のことを好きでないと、人が来たいとはきっと思わない。だって、働いている人が「さっさと帰りたい」と思っている施設に好んで来る人なんていませんものね。

 強烈なリーダーシップを発揮する上司というのは非常に難しくて、人を引っ張るためには、「好き」という気持ちだと思う。たとえば「熱すぎて」ついていけないと思っても、しょうがないと思わせるくらいに「愛」を感じれば、それなりに人はついてくるし、次第に感化されるはず。(されない人は、去っていくでしょう。個人的には去って欲しい。冷えた目で働かれるよりは)

 旭山動物園は、そうやって本を読む限りでは、すばらしく熱意があり、すばらしく愛のある館長さんでした。
 本文中に出てくる言葉で「恥はかかせられません」と、従業員の方のコメントがあります。
 そういう言葉の出てくる施設って、素敵だなあ。


 ちなみに文中に、到津の森公園が出てきます。
 というより、旭山動物園とダブルタイトルなんですが、こっちは、うーん。
 ちょっとほめすぎ、かなあ。
 よーく読むと褒めてないところも多数あって、そのあたりは編者のテクニックを感じます(笑)。
 到津の話はリアルタイムで知っているので、ある意味感情の相容れない部分もあって、納得できないところもありましたが。
 北九州人はよく自虐的という話を聞きますが、その血はわたしにも流れているのかしら(笑)。

 到津遊園という西鉄の持っていた遊園地(兼動物園)がありまして、西鉄は、まずその前を通っていた路面電車を廃止しました。そうして交通アクセスも悪くなり、ますます採算の取れなくなった遊園地を、閉園すると打ち出しました。
 数十年の歴史を持つ遊園地で(過去は動物園が主でしたが)、親子3代にわたって遠足は到津というところもあるくらいですから、市民は怒り、焦り、存続運動をします。そして様々な形で支援することを約束し、最終的に市が譲渡を受ける(土地を一部購入するなど金銭収受はあり)というストーリー。
 もちろん、書いてあることは、全部事実です。捻じ曲がってもいないし、実際にそれだけの人たちががんばっています。
 でも、市民は実はとってもしたたかでした。(西鉄もね)
 文中に、閉園の公式発表を引き伸ばす話があります。もちろん早々に発表することのデメリットが大きいからですが、公表される前に市民にはちょっと流れていましたし(ああいうのって、どうやって流れるんでしょうね)、発表のタイミングはとっても計算された結果でした。
 だって、そのタイミングは、市長選の年だったわけですから。
 目玉ですよね。市が存続させないわけにはいかない。到津を潰した市長なんて、再選されるわけがない。そんな空気はぷんぷんしていました。
 だから、(わたしの感想としては)たくさんのお金を払って、市が譲渡されることになった。
 絶対に西鉄は狙ってたよね、とは当時の感想です。市民にいわゆる総スカンを食う可能性があったのを、うまく市に押し付けたなあと。

 いやいや、地元ということでちょっと厳しくなってしまった。 
 実は本に書かれていない苦しいことは他にもあって、到津は面白いサポーター制度をとっていて「この動物は年に200万円分の餌がいります」みたいなPRをして、その動物に向けた寄付を募ったりしています(餌を食べやすい大きさに切るのはボランティアの仕事。一切、動物に触れずひたすら野菜や果物を切っているそうで、本当に頭が下がります)。
 わたしたちの世代では、到津といえば、象とカバ。
 特にカバさんは、歯磨きショーを見せてくれる(旭山動物園の園長に言わせるとそういうのも駄目なのかなあ)非常に人気のある存在でしたが、開園直前に死亡。これは、新聞にも出たのですが、ちょっと凹みました。

 どうしても施設の内容の話に終始してしまうのですが、本としては経営者としても役に立つと思います。

 イルカやアシカの、本来はすべきでないショーを見世物にして客寄せをしている動物園に対し、「野生の動物は野生のままに」という信念のもとで、あるがままの姿を生かす演出をし、人を呼んだこと。
 年間来園者数を問題にするなら、冬も開ければいいという目からウロコの発想で伸ばした来園者数。北海道の動物園ですもの、冬は3時で閉めますといわれても納得せざるを得ない。
 冬は冬の見せ場を作り、夏は夏の見せ場を作る。その発想力と、行動力。
 予算はオールオアナッシングの強硬派らしいですが(笑)それは、いわゆる役所予算の「遊び」がないから。
 それでも、都市の規模を考えるとこれだけの投資をした旭川市はすばらしいと思います。

 到津の森も、もう少し現場の意見を聞いて作っていればなあと…(ここが文中でさりげなくほめていないところ。笑)しみじみ思います。
 施設の問題としては結構イタイことを書いていますし、うーん、この二つを並べるかという気もしなくはないですが。性質の違う2者を並べた面白い本だと言えると思います。

 たぶん、読み返したくなる本。

2006年1月13日

●金持ち父さん貧乏父さん


ロバート キヨサキ, 白根 美保子
金持ち父さん貧乏父さん


 いわずと知れたベストセラー。
 この本が出た頃には、まったく投資なんかに興味がなかったのでちらりとも見ませんでした。
 本って、ホントに「読みどき」があると思う。

 最近、ネットトレードを始めたので、それ系の本をいくつか読んだのですが、その中でオススメされていたため手に取ったようなものです。
 本の中で推薦されてなければ手にとらなかっただろうな。
 だって、「投資」といってもそれはネットではなく、どちらかというとその他の不動産や、企業家としての投資術の話がメインだから。パラ見すると、人生設計だとか、どのように学んだのかとか、そういう自叙伝的なことばが並んでいて、買おうとまでは思わなかったかもしれない。
 でも、読んでみるとコレがすごく、物事の見方を教えてくれた気がする。

 著者の周りには「金持ち父さん」と「貧乏父さん」がいた。
 それも、とても象徴的なふたりだったのである。
 金持ち父さんは、学歴こそなかったけれど「お金と人のつかいかた」を知っていて、どんどん金持ちになっていった。
 貧乏父さんは、高学歴で高収入だったにもかかわらず、いつも請求書に追い回されていた。

 人は、お金があると、あるだけ使ってしまう。
 一生懸命働いて増やした収入を、もちろん自分のために使うことが無駄なのではない。けれども、収入が増えた分だけ請求書の額も上がっていったとしたら、そうしたら手元には何が残るのだろうか?
 それを考えさせてくれる本です。
 文体は一人称で、こうであった、と過去の体験をわかりやすく語るような文体で書かれており、読みやすく親しみやすいです。ちょっと厚いですが、わりとすんなり読めますし、話のヤマがはっきりしているので、中断しても前の部分を思い返すことができます。(私は通勤のときに読んでいました。多少寝ぼけていても頭に入ってきます・笑。取り付きにくい本はそのまま眠ってしまうものですが…苦笑)

 この本の中で、著者は元手をなしに起業する方法などを紹介しています。税制や法律の違う日本で(著者はハワイで成功した方です)どれだけそれを行えるのかには当然、疑問は残りますけれども、こういう枠組みの中でこうすれば稼げる、という実体験を伝えてくれることで、多少なりとも今の生活に疑問を持つきっかけになればいいなと思います。

 ちなみに今は、続編に当たるのかな?投資入門を読んでいますが、そのなかで著者はやんわりと株投資を否定しています(苦笑)。ある意味、人智の及ばない部分がある投資ですから、あまり勧められないというわけのようです。