2006年06月16日

●モンキーターン


河合 克敏
モンキーターン  全30巻

 モンキーターンとは、競艇選手がブイを回るときに使う旋回テクニックのひとつ。名前の通り、競艇選手の物語です。
 少年サンデーコミックス。少年誌で競艇をテーマにするとはある意味チャレンジャー。(笑)
 主人公は野球少年だったが、担任の先生の勧めで競艇選手になることを決意する。
 本栖にある競艇選手の養成学校を受験して入学し、競艇選手になって上を目指してゆく…というのが、丁寧に描かれています。
 だいたい6巻くらいまでが本栖時代のお話、15巻くらいで中堅どころにまで成長し、そこから超一流を目指す…という感じなのですが、なんでもそうなんだけど一代記というのは終わりがないんですよね。
 学生時代なら卒業を区切りにしたりできるけど、競艇選手の選手生命というのはとても長いし(50代の選手もいる)、これを手に入れたら終わり、といういわゆる競馬の日本ダービー的なものもない。(SGという大レースはいくつかありますが、これが頂上、とか1回限りとかでもないので)
 話によどみはないし、キャラクターもきちんと立っていて隙がないから安心して読める。
 だけど、「競艇選手」としてのお話、ネタ的なものがだんだん切れてくる感じがしてラスト近くはちょっとどきどきしてました。もしかしたら違うのかもしれないけど、1話あたりも短くなっていたように思います。
 
 でも、このお話のおかげで競艇にちょこっとだけ詳しくなりました(笑)。
 前作「帯をギュッとね! 」でスポーツ漫画をきちんと書き上げた人らしく、「上を目指す人たち」が綿密に描かれています。特に、今作は登場人物の年齢に開きがあるので、その時代の人たち、というくくりでの考え方の違いなんかもでてきて、話が深いです。怪我をすること、リハビリ、勝つために努力すること、ひとつひとつがきちんと描かれているのでやっぱり何度も読み返してしまいます。
 さて、ただしちょっとなーと思うのが「恋愛」。
 さわやかにするために恋愛要素が必要なのかしら??
 この話には最初から、「幼馴染」の女の子が登場。そして、本栖で出会う女子選手もちらほら。結局、恋愛がらみにはならなかったけれど、当初はそれっぽく表現された先輩女子選手まで。
 でもメインが競艇だから、恋愛はじりじりとしか進まないし、うーん、この作者さんはそういう表現があまり得意じゃないのかな、と思う。
 だから匂わせる感じで終わっても全然かまわなかったと思うのだけれど、ラスト近くでケリをつけなきゃと思ったのか、いきなり告白やらなにやら出てきて、風呂敷畳んでます、という雰囲気全開。
 えーちょっと待ってよー、な展開になってしまいます。ちょっとだけ、え?波多野(主人公)ってこんなキャラだったっけ?と。学生じゃないから清い恋愛じゃなくてもいいんだけど、でもなんだかなー。
 その部分だけ除けば、ホントに傑作だと思います。
 ちゃんと全巻、ウチの本棚に常駐してますから。

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