2006年05月07日

●猫丸先輩の推測


倉知 淳
猫丸先輩の推測

 創元推理社からデビューした作者さんで、このシリーズは同社でも文庫を出しているのですが、この本は講談社ノベルスです。
 推理小説なのですが、このシリーズでは滅多に人も死なないし(笑)、犯人を追い詰めたりもしません。 
 猫丸先輩は、あくまでも「先輩」で主人公ではないのです。探偵役だけど。
 語り手が不思議な事件に遭遇して猫丸先輩に相談する、あるいは傍観者として猫丸先輩(語り手から見れば見知らぬ他人)が現れる。そして勝手に適当な推理を披露してみせる。
 これが基本パターン。
 このシリーズ、傑作と思うのは別の長編(1本しかないのですが)なのですが、あまりにもこのイラストがはまっているので、この本から紹介してみました。
 童顔で年齢不詳、名前のとおり、ちょっと人懐こい猫みたいな行動で、いろんなシーンにするりするりと入ってくる。
 ちょっとずるいのが、基本的に猫丸先輩の話すのは「推論」であって、真相究明ではないこと。
 「~だと思うよ」と言われ、なるほど!と思うのですが真相は概ね藪の中。自首させたり逮捕したりするわけではないので、そういうきちんとした?解決がお望みならちょっぴり合わないかもしれません。
 それを逆手に取ったトリックを使ったりもしていますしね。
 
 とにかく作者の目のつけどころが面白くて、先が気になる書き方をする人です。
 読み方としては正しくないかもしれないけど、最初にまずナナメ読みして後からじっくり読み直すと言う形式をとってしまいます。この作者の本だけは…。
 とにかく結末が知りたくなるんですよー。そして、読み終わった後の伏線の使い方に唸るのが定番。
 短編集中心なので、どの本から呼んでも面白いです。
 この本でのオススメは「失踪当時の肉球は」失踪した猫を探すのを引き受けた探偵さんが語り手のお話。
 猫探しを引き受けたはいいが、迷い猫探しの定番、ビラ配りにポスター貼りはなぜか次々に妨害されて…という内容。死体は出てきません(笑)。
 語り手さんのハードボイルドかぶれっぽい行動など随所に笑いのエッセンスも散りばめられています(笑)。

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