2006年05月05日

●BASARA

ひさしぶりの少女漫画読破。
長編をがーっと読ませる作品って少ないなあ。少女漫画は月刊誌中心のせいかな…(1話が50枚前後で1巻が出るのに半年くらいかかるから、よくできてないと飽きやすいよね…。10巻ちょっとで5年とかかかったりするし)



田村 由美
BASARA(1) 全27巻(コミックス版)

 双子の兄妹、タタラと更紗は「百虎の村」で幸せに暮らしていた。
 タタラは将来、世界を救う「運命の御子」として予言された存在だったため、その成長を周囲から心待ちにされていた。
 成人の日、百虎の村に「赤の王」が現れる。運命の御子を差し出せ、と言い、タタラを捕まえ首を落としてしまった。
 逃げ惑う人々。村人の動揺を抑えるため、更紗はタタラのふりをすることにする。
「死んだのは妹の更紗だ!」
 その日から、更紗はタタラとなった。
 
 タタラの目標は赤の王を倒すことだ。
 日本の王には、4人の子供がおり、それぞれ色の名前の冠を抱いていた。
 末子、赤の王の目標は、自らが国王となること。
 敵を討つということは、ただ思っているだけでは駄目だ。力が必要だと、タタラは各地を回って手勢を集め仲間を増やす。
 そうしているうち、「更紗」は「朱里」という名の男と出会う。惹かれあう二人。けれど互いに、くちには出せない秘密を持っていた。更紗はタタラであること、そして朱里は赤の王であること。
 この二人の恋は、結ばれるのか…?


 このお話は少女漫画らしく恋愛を絡めてあるのだけれど、基本的には「決断」の物語。
 前に進むか、打開策を考えるか。誰を信じるか、誰を疑うか。
 一歩進むごとに出てくる問題を、ひとつずつクリアしていかなくてはならない。
 タタラを名乗りたての頃の更紗は、思えばすべてかなうと思っていたし、頑張ればどうにかなると信じていた。それが、大きな失敗をして仲間を失う結果となってから、慎重になる。
 慎重になるけれども、仲間を信じるという気持ちだけは失わない。ある意味、優等生。
 だから、読者にはわかっている罠や策謀にあっさり引っかかっていらいらしたりする。
 でも最後まで信じることが正義だと思わせてくれる。
 登場人物はどれも重要で、それなのに死んでゆく。死んでしまう理由もきちんと書いてあって、いつも正攻法な書き方をする人だなと思う。
 少女漫画でコミックスサイズ、物語の世界観のせいか大ゴマが多くて、もちろん手抜きなんかではないのだけれどさらさらと読めてしまうところがちょっと難。線が細いせいもあるのだろうけれど。
 ここのところ濃ゆいタッチの本ばかり読んでいたせいかな…。

 あとは、これだけ長い話を書いてしまったので、書けなかったシーンがたくさんあったのだと思う。
 本編は25巻で終了し、外伝ばかりが最後に詰め込まれている。
 その後、や過去を書いてあってとても面白いのだけれど、本編直後っていうレイアウトや、どうしても入ってしまう白紙ページへの落書きめいた4コマ、ファンサービスとしてはとっても嬉しいのだけれど! 非常にイメージが悪くてもったいないことをした感じ。
 せめて本編はきっちり巻末で終わらせて、外伝だけでまとめるとかにならなかったのかなあ。
 20巻過ぎくらいから、巻末に20枚くらいの短編が(本編と繋がるようで繋がらない)載っていて、それもちょっぴり違和感があったのですが…。
 外伝はたくさん載っていてどれも面白いのですが、「浅葱が朱里をきらいになったわけ」の描かれている「DAKARA」がかわいくて好き。
 それから、隼人が頑張る日本のその後がわかる話も好きです。

 実際、傑作だと思う。
 前述の通り大ゴマが多いので、文庫で揃えたほうが読みやすくていいかもしれないなあ。

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