2006年03月01日

●あんこ坂のお医者さま


一丸
あんこ坂のお医者さま  全5巻

 リンクは4巻へです。1巻は表紙絵が出なかったので…。
 主人公「ちろる」は、大学病院を出て森山医院という町医者に勤めることになりました。ちろるが森山医院にやってくるところから話はスタートします。
 森山医院は「じっちゃま」ことおじーちゃん先生がずっとやってきた病院で、医大を出たての若造医師にみてもらうことを不安に思う人ばかり。でも、持ち前の明るさと天真爛漫さでうまく町の人に溶け込んでいきます。
 人とのふれあいをメインに描かれてはいるのですが、ちろるは問診・診療が異常に長い。徹底的に検査してみないと気がすまないし、きちんと患者さんと向き合わない医者は大嫌いときて、さりげなく現代医療に批判的。
 ただし、病院通い歴のながい私の目から見ると、検査しまくられるのは安心だけど診療費が高くなるというイタイ面もあるし、問診が長いとその向き合っている時間は嬉しいのだけど待ち時間はいらいらするしという諸刃の剣なので、ちょっとむずむずしました。
 そのあたりはじっちゃまがさりげなくフォロー。
 レジのお金は持ち出すし診療はサボるしもーどうしようもなく見えるのに、診療は早くて的確、全部を自分のところで診るのではなくて紹介状を持たせて専門家に回すのも仕事、とちろるを諌める面があったりして、なかなか奥が深い。

 さて、ここからはちょーっとだけネタバレ。
 というか、2話目(だから1巻)くらいで明かされるのですが、ちろるはじっちゃまの孫。だけど、とっつぁま(ちろるは父をこう呼ぶ)の戸籍には入っていないらしい。いわゆる浮気相手の子。
 認知されているのかどうかとか、なぜ苗字が一緒なのかとかその辺は語られません。
 それから、なぜちろるが森山医院に来たのかも。
 だって、とっつぁまには息子がいるんです。医者をしている、ちろるの異母兄が。
 うーん、なので、5巻で最終と聞いたとき「??」となりました。打ち切りなのでしょうか…。
 そのあたりの描写をまったくせず、3巻くらいでお前なんか妹じゃないと切り捨てた兄が、5巻でいきなり悪かったと言って謝ってみたり。(正妻さんがとても苦しんでいる姿を見ていたので、到底許せないでしょうという描写があったのにですよ)
 一話ずつは割と面白かったのですが、青年誌掲載物は短い枚数での完成度を求められるし、詰め込みすぎて息切れしたのかなという面も少々。
 町医者を中心にすえて描けるテーマというのは、医療をメインにするとすごく少なくなると思う。
 重病は大病院に回すし、診察で難病発見!というのは数が多いとうそ臭くなる。
 そんな中で、ソツなくまとまっている作品です。
 ……打ち切られ臭が漂う5巻ラスト数話はちょっといただけないけど、それでも完結、っていう「ほっとした感」は味わえましたから…。

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