2008年08月24日

●紫川水上劇場・感想。

 行ってきました。
 感想は…えーと…ビミョー。

 脚本:高坂圭。
 演出:ペーター・ゲスナー。
 紫川水上劇場・紫~まれびとエビス。
 北九州市小倉北区の紫川河畔にある、舞台(浮かんでいる)での上映。
 ちなみに仮設ではなく、常設舞台です。

 写真にもあるようにものすごくよいロケーション。
 BGMは谷本仰氏を始めとする生音。
 期待バリバリです。

 それで、期待しすぎたのかもしれません。

 大きく感じた点は、2つ。
(1)登場人物の背後に、人生がない。
(2)場面転換がとても下手。


(1)はとても問題で、役者のうまいへた以前に、キャラクターが一貫していないので、感情移入ができなかったのです。
顕著だったのが「紫」という女の子の役。
最初、巫女のような存在として登場、ムラビトに託宣をするシーンから始まります。ちょっとイントネーションが妙で引っかかりつつ、すぐ後のシーンで「聞こえない声を聞こえると言い」ということから、巫女のふりをしているのだとわかり、違和感のあるしゃべりはわざとなんだーと納得。しかし、ムラオサの兄と話すときはいきなり「○○ナノヨネー」「○○だからぁ」と変な現代口語になってみせる。
主人公のエビスと話すシーンでも「~~だったのです」と語りあげたあとでいきなり、「~~なんだってぇ」とちょっとはすっぱっぽいしゃべり方。
演劇の中で得た情報によると、鉄を打ち、山々を渡り歩いているヤマビトを統率する立場の兄と、山ノ神のお告げを託宣することでヤマビトの心を支える役割を持った紫。
いきなり手にした立場でもないようで、ムラじゅうから崇められている存在の女の子がそんなはすっぱなしゃべり方を学ぶ機会・しゃべる機会があるのだろうか?と考えるとその時点で、そのしゃべり方はありえなくなるのでは?と感じました。
さらに、そんな背景にある人が、ヤマビトの宝(と思われる)刀を何のためらいもなく渡そうとする。

 ……えーと。
 とっても紫の行動が顕著だっただけで、こんなふうに、各人がありえない行動を取り続けるので、ものすごく謎でした。

 まれびと、というテーマはとても重いものだったのに、物語のキイとなる部分では使われていません。

 エビスは海からやってきたマレビト。
 ウミビトの襲来を受けて皆殺しにされそうになっているムラビトは身を隠し(ウミビト=海賊が襲撃した村にいつまでもとどまり続ける謎はこの際置いておくとして)、敵を打ち破る力をもつ剣を求める。
 マレビトは幸運の証と言われるが、定石としては不幸が起こった際は真っ先に原因とされる。たたる前に祀るという発想で幸運の証とされているだけのこと。(作中ではなく、一般的なマレビト論です)
 ウミビトの襲撃の際、ムラビトははっきりと「マレビトが攻めてきたぞー」と叫んでいました(聞き違いでなければ)。
 ムラが危機に陥ったとき、エビスは気性が荒いヤマビトの元へ剣を取りに行かされます。何の交渉手段(貢物)も持たずに。
 本当は、この物語の中でここがキイだと感じたのですが、剣を取りにいくよう説得されるシーンはなし。エビスは説得された状態で登場。
 ヤマビトからも、鼻で笑われ良いように使われてるんだよ、と言われるのですが、それ以上の話はなく。
 終盤、ヤマビトたちももとはマレビト(=海外から来た)であることが判明、マレビトはこういうきつい仕事しかできない(=山に追いやられている?)、というような気になる発言もしますが、それ以上は突っ込まず。

 まれびと、というキーワードは何一つ生かされていません。

 テーマが面白かっただけにとても中途半端な印象でした。

(2)は、もうなんというか。今がどこなのか、過去(回想)なのか現在なのか、さっぱりわからないのです。
手前と奥、の2つのステージがあまり効果的ではなく、手前が死角になりやすかったことを考えると、演出上あまり成功した…とはいえなかったのかなあと思いました。

 セットに組んである赤と緑の旗、模様が違うんですね。
 赤の旗は左手、緑は右手に組んである、これも何かの効果かと思っていたら何一つ筋には関係ありませんでした。壁紙状態。
 
 なんか、始まる前に自分で期待しすぎたんだと思います…。きっと…。

 最後に、まあ、演出なんてのは似るもんだと思いますが、ちょっと気になった演出。
 えーと、個人的に趣味は偏っているので、似たような演出はほかにもいっぱいあると思うのですが。
 場面転換のシーンで大音量の音楽+歌+ダンスっていうのは、劇団新☆感線の常套手段なのですね。最初の場面転換で、しかもひとりで浪々と歌い上げるところとかがそっくり(しかしあまりうまい使い方とは思えなかった…)。最初になんか乱入してくるのも、たまたま見た大駱駝鑑の芝居にあったので…(これは超偶然だと思うのですが)。そこで?がいっぱい飛んでいたので、ラストのタップダンスは、タップの振りもリズムも大してバリエーションがあるわけではないのですが、座頭市にしか見えんかった…。
 頭にハテナをいっぱい飛ばしながら、これらの演出は、いわゆるパクリで笑いを取ろうとしているのか??という謎から抜け出られませんでした(なんかそういう映画ありましたよね)。うーん。

 総括的には、
 とても細かい脚本を書いた後で、尺が合わないからといろいろ削られ、回収されていない伏線と、張られていないのに回収されようとしている伏線だらけのお話になったんだろうなあ…という印象でした。
 役者さんもスタッフさんもものすごくがんばっていたし、ロケーションはよかったし、BGM(もはや「バックグラウンド」ミュージックではなかったが。音楽にちょっと負けてた…)は最高だしで、また見てみたいなあとは思います。
 できれば、次のホンは、今度は舞台の脚本を書いている人にお願いしていただきたい…。

 何気なくこんな近くでやっているのに、芸術劇場は全然噛んでいなかったっぽいのも気になるポイントですけどね。

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