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2007年10月06日

Death in the Freezer(W6200)

Death in the Freezer level 2 (Oxford Bookworms Library)
0194229696
Tim Vicary Tricia Hedge


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by G-Tools

GR:OBW2
語数:6200
YL:2.6
すらすらレベル:★★★☆☆

 レビューを書く前に、内容を忘れていたことに気づいて再読。
 ストーリーそのものは、先の読めない展開で読み進みたくなるんだけど、登場人物(というか主役)が好きになれず、読めば読むほどいらいらするという微妙な展開に。
 読み物の展開としては面白いし、オチも絶妙なので、オススメの部類には入るのですが。

 作者のTim Vicary 氏が、多聴多読マガジンでインタビューに応じていて、気に入っている作品に挙げておられました。
 確かに、
I kill a dead man.
で始まる書き出しは秀逸。

 典型的な家庭崩壊パターンで進む作品は、誰かがどこかで止められたんではないかというステレオタイブ。
 主人公Ellenは、弟Alが生まれたことで、両親の関心が自分になくなったと思い込み、人形を壊したりといった反抗をいろいろやってみるが、両親には伝わらない。お決まりのパターンで荒れた生活をし、明らかに「やばそうな」タイプの青年と出かけるところを父親に止められるが、「いまさら何よ」みたいに取り合わない。
 父親は、Ellenのボーイフレンドに腕力で負けたことが悔しくて身体を鍛えようとするが、ランニングの途中で心臓麻痺で死亡。(いや、これってどうなのよ)
 親の言いつけにそむいたEllenには一円も残さず、全部Alの手元に入る。
 Ellenは父親の心配どおり、「やばそうな」青年は、働かず遊び歩くばかりの相手で苦労しているが、未成年のAlを引き取る。しかし、Alは音楽で成功し、さっさとEllenの家を出て行く。そして、Ellenは苦しい生活をちょっとはAlが助けてくれるのではと期待するけれど、AlはEllenのことをていのいい家政婦のようにしか思っていない…。
 お互いがお互いのせいで不幸になった、と思っているそういう意味では痛くて苦しい話。
 そこにプラスして「Freezer」が噛むことで、いきなりSFになって面白くなります。

 以下は、ネタバレも含みつつ。

 ある日いきなりAlがFreezerの中で眠っているのを見つけたEllen、この間Alが連れてきていた怪しげな夫婦がそのマシンを管理しているのを知って怒り狂います。
 Ellenは、Alが死んでいるのにAlの財産を相続できないからです。彼らが言うには、「Alは死んでいない。眠っているだけ」だから。
 夫婦はAlに信頼されて、家の管理も任されているといいます。
 話はEllenの一人称で進むので、実際に夫婦が悪者かどうかはわかりません(いや、悪者だと思うけど)。
 ただ、実の姉がいるのに、自分がコールドスリープに入るとき、赤の他人に財産管理を任せてしまうのってどうなんだろう。起こしてもらえる保証もなく、起こしてもらえたときには無一文かもしれないのに。
 AlはAIDSという設定で、出版された当時(90年)は不治の病で長くて10年といわれていたので、間接的な自殺だったのかもしれないけれど。
 さらりとだけれど、崩壊した家族の苦しみが書かれているところ。
 Ellenは、Alは死んでいるといいます。
 彼女は非常に被害者意識の強い人なので、肉親としてコールドスリープを拒否していたのか(延命装置を嫌がる人がいるように)、それとも「死んでいない、100年後でもコールドスリープから目覚められるのだから今でも生きている」と言われて、お金を使いたいから死んでしまえと思ったのかはわかりません。

 彼女は、ついにスイッチを切ります。
 そして、Alを殺したことにより、裁判に掛けられます。

 「すでに死んでいた男を殺した女」として一躍有名になったEllenには腕利きの弁護士がつきます。
 その時点で確立していたわけではないコールドスリープでは、Ellenがスイッチを切らなくとも、本当に目覚めることが出来たかどうかわからない、そこが焦点でした。
 弁護士も、そこを突いて勝利を勝ち取りたかったはず。
 でも、被害者意識の強すぎるEllenは、自分がいかに迫害されていたかを切々と語り、「だからこれくらいは貰っていいはず」という持論を展開したため、陪審員を敵に回します。
 さらに、腕利きの検事は、AIDSに感染する原因を作ったのはEllenだという根拠となるものを提示して、Ellenを追い込みます。
 直前で陪審員に疑惑を持たせるような持論を展開してしまっていたEllenには、それを覆すだけの反論は出来ませんでした。
 結局、自分が招いたことなんだろうなあという感じです。
 最後は「皆が私を嫌っている。誰も助けてくれない」と締めくくられます。
 非常に面白いのですが、同時にとても後味の悪いお話でした。……。

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